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省エネ住宅の実体…標榜工法の評価は

2015/05/08

新住協代表理事でもある鎌田先生監修による’燃費半分で暮らす家’が上梓されました。その中からまず最初に’省エネ快適を謳ういろいろな工法は本当か’についてお知らせいたします。(抜粋記事)

①エアサイクル工法…この工法は企業や時代によって、システムが微妙に異なり、南面で温められた空気が、建材の水蒸気を含んで、北側に流れてそこで結露するといった被害も実際に発生したこともあるようだ。断熱材に穴があいていて、外壁で温められた空気が、その穴から室内側に入ってくる、という工法もあるが、夜風が強いときは寒いと思われる。また空気の流れを変えるダンパーなどの部材は、隙間が多いため理論通りには流れてくれない場合が多い。

②エアムーブ工法…エアサイクル住宅とソーラサーキットをヒントをもとに考えられた工法。断熱層の内側と外側に二重に通気層を設け、断熱層に穴をあけ、冬は太陽熱で暖められた外側の空気を内側に取り込む。エアサイクルに似ているが、軽い弁を使って空気をうまく流すように工夫されている。夏は内外両方の空気層を使って排熱する仕組みで、基礎断熱換気口をあけ、地盤の冷熱を利用している。この部分はソーラサーキットとそっくりである。強風時や夜間にこの弁で気密が確保されるが、夏は、棟の換気口のドラフトだけで床下の冷気が家全体を包むように上昇するとしているが甚だ疑問が残る。(冷たい空気は体積が重いため自然に上昇するには無理がある)断熱厚さは、次世代基準ぎりぎりであり、これに穴をあけると気流が想定通りには動かない場所では断熱性が相当低下する。

③ソーラサーキット…押し出し発砲ポリスチレン版を使った典型的な外断熱工法であり、ぎりぎり次世代基準をクリアできる高断熱工法である。二重通気の考え方を採用しているが、そのうち外側の通気は、すべての高断熱住宅に備わっている通気層と何の変りもない。断熱層内側の壁内空洞部を利用して空気循環の経路を造り、これで冬は南側の暖かい空気が北側の部屋に回ると言うが、その効果は微々たるものである。夏は床下の冷たい空気が、壁内を上がってきて、部屋をすっぽりくるんで涼しくなると言ってるが、床下の冷たい空気は重いので、すべての壁を一様に上っていくことはなく、一部の壁で多少の上昇気流が発生するに過ぎない。

④OMソーラー住宅…この工法は屋根の空気集熱パネルで高温の空気を造り、冬はそのまま空気を床下まで引っ張り、床下を暖めその空気を床から吹き出す工法である。日中はとても快適であるが、夜は床下の地盤やコンクリートの蓄熱だけでは全く足りず、床下に暖房設備を入れることになる。この工法は高気密、高断熱化を採用してはいない。その後パネルによる高気密高断熱化を試みたが、過大暖房になり日中のオーバーヒートが問題になった。夏を中心として、太陽熱が余っているときは、それでお湯を作るシステムを備えているので、冬場もそれを使えればよいが、一年中お湯を作る住宅になりかねない工法である。

以上代表される工法を掻い摘んで説明しましたが、鎌田先生は断熱住宅の評価はあくまで快適な室内環境と暖房費がどの程度であるかが重要であると言ってます。冷たい空気が上昇し、暖かい空気が下降するなどありえないことを、まことしやかに説明するセールストークに引き込まれないよう注意しなければなりません。