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それでも外張り断熱を選びますか

2015/05/12

断熱工法には充填工法と外張工法があるのはご存知のことと思いますが、それぞれの工法を理解して建てている人はごくわずかです。そもそも断熱材を壁の間に充填し一般的に使用され始めたのは昭和40年代の後半あたりでしょうか…その頃の断熱材は袋入りの厚さ50ミリサイズが標準だったようです。現在では高断熱工法は標準工法となり世間に認知されたものとなっていますが、ハウスメーカーなどでは外張工法に特化して発泡プラスチック断熱材を使用した外張断熱が主流となっているようです。ところで外張工法とはなんなのでしょうか?…この工法は板状の発泡プラスチック断熱材を用い、家の外側をすっぽり覆ってしまうやり方であり技術的にも容易であるため、今ではほとんどのハウスメーカーに採用されています。しかしながら簡単な工法ゆえに危うい欠点も併せ持った工法でもあることもご存知ですか?

欠点その①

板状のものですっぽり覆うわけですから、外壁はその上から施工することとなり、当然断熱材を貫通して下地まで釘を通さねばなりません。しかし発泡プラスチック材には摩擦力が殆ど無いため、釘が効きません。釘が効かなければ、外壁材の重みにあがなうことなく、壁全体が緩む恐れが大となります。また木材の乾燥収縮に伴って断熱材は緩みます。そうなれば断熱材同士に隙間が生じ、熱橋(ヒートビリッジ)を引き起こすことも否定できません。実際に中越地震においては、縦揺れによって多くの建物の外壁材が剥がれ落ちたことが報告されています。

欠点その②

断熱材そのものが可燃性(石油を原料に製造)であるため、火災時には激しく燃焼し、合わせて有毒ガスも発生します。住宅は法律に従い、防火構造になっていますが、外張り工法は通気層から直接延焼することも考えられる極めて火災に対しては脆弱な工法と言わねばなりません。平成11年秋田市での住宅火災で4人が死亡した事例は、初期の段階での一酸化炭素中毒が死亡の主なる原因とされ、調査の結果、外張断熱であった事実も確認されました。

では、どちらを選択すればいいのか?

そもそも高断熱住宅が提唱された理由は、小さなエネルギーで部屋全体をあたためることができることです。また少ない排出ガスは地球温暖化防止にも寄与します。初めて高断熱住宅が建てられた当時は、そのほとんどはグラスウールを用いた充填工法であり、発泡プラスチック系の断熱材を使用したものはありませんでした。しかし現在巷に氾濫する省エネ住宅と言われる類の建物の多くは、高いフランチャイズ料をとって、工務店を募集し、大きな利益を上げようとする所謂’売りたいがための省エネ住宅’であることに疑問をはさむ消費者は少ないようです。外張工法に使用される断熱材の量は、大型トラック1台分にも相当する10㎥と言われます。ただでさえ火災に弱い木造住宅にこれほどの可燃性の建材が使用されている建物が相当数あるとしたら、今後想定される大地震によって大規模の火災が起こったことを想像するだけで末恐ろしさを感じます。欧州においては発泡プラスチック系の断熱材は住宅には使用しない建材に分類されています。自然災害の多い日本でこれらの建材が何ら規制されることなく普及しまったことに対し何の疑問も感じないまま作り続けているハウスメーカーや業者の建物は真の意味でのエコ住宅ではありません。今後は業者の言いなりではなく、住宅を建てる消費者側の理性的な選択が求められているのです。