日本の住宅事情(先進国最低ランクって本当?)
2021/12/18
圧力に揺れ動く国の方針
断熱性能で先進を行く欧州は別として中国や韓国の断熱性能にも及ばないとは…日本の住宅の断熱性能は、先進国の中でも最低ランクに位置していることはご存じですか?政府は「2020年までに省エネ基準への適合を義務化する」とし建築物省エネ新法まで作って義務化を進めてきましたが業界の猛反対に会い早々に法案を引っ込めざるを得なくなりました。その理由として大手のハウスメーカーはじめ中小の工務店が’それでも緩い’(Q値2.7以下)と言われる新基準にさえ対応できず、もし法律が施行されれば業界が混乱するという身勝手な理屈を並べ立て政府に圧力をかけたのではとも言われています。
世界の物笑い
2010年、ドイツで開かれたカンファレンスに於いて、日本が自信をもって次世代エネルギー基準を発表したところ会場から笑いが起こったそうです。さらにこの基準が義務でなく努力目標であり、新築住宅の30%以下しか達成できていないことを発表したところ、これもまた失笑を買ったともいわれています。我が国の次世代基準とは平成11年に提示された今から20数年前の基準であり、この基準を欧州の建物に当てはめると、なんと1980年代に建てられた建物の断熱基準と同等の極めて低レベルの基準なのです。また先送りされた2020年基準でもドイツなどに比べると、その考え方に30年の開きがあるともいわれています。このように日本の温暖化ガス削減の取り組みは、毎年「化石賞」の対象国になるほど遅れており、2050年のカーボンゼロを見据えた意識の変革が求められています。
次世代基準は低レベル
それでもハウスメーカーは「次世代基準による高気密、高断熱の家づくり」などといかにも’暖かい?’と思わせるような巧妙な宣伝文句を駆使していますが、この次世代基準というキャッチコピーこそがクセモノなのです。消費者はこの基準は時代を先取りした建物に違いないと思い込み、何の疑いも持たず契約したのち住んでみて初めて暖かくないことに気づくこととなります。次世代基準は今では過去の産物でありこれをもって暖かい建物と宣伝する業者は相当レベルが低く同時に施工能力は殆どないと思って間違いありません。これから新築を計画している方は一つの指標としてQ値1.0台、そしてUA値3.0~4.0の建物を作ることができるかどうかを確かめたうえで業者選択をすることです。
後悔先に立たず
余談ですが、住宅の先進国の欧州において省エネは、法律で義務化されており基準に満たない建物は建てることはできません。また、新築住宅において結露が発生した場合には施工者責任が問われることから、あらゆる住宅業者が緊張感をもって施工にあたっているのです。はたして日本ではどうでしょうか?名だたるハウスメーカーや多くの工務店は2020年の断熱基準さえ満足に対応できないのですから結露をなくすことなど到底できるはずがありません。まずは大手ハウスメーカーは絶対大丈夫という固定観念を払拭し、後々に後悔しないためにも建てる前に断熱性能に関するあらゆる情報を検索し納得してからスタートすること、そして「後悔先に立たず」の格言は現在の住宅事情にも当てはまることを理解してください。
参考
UA値0.87…平成25年基準、この数値での住宅は欧州では存在しない。中国、韓国では違法、ちなみに 2020年度日本の改正省エネ基準4地区(福島県中通り)は0.75 これほど低い数値にもかかわらず義務化を見送り
UA値0.6…ZEH住宅、日本の住宅新築の約1.5%程度、この数値での住宅は欧州では存在しない。中国、韓国では違法
UA値0.46…HEAT20G1クラス、この数値での住宅は欧州では存在しない。中国、韓国では違法、ちなみに2020年度日本の改正省エネ基準3地区(北日本、北陸等)は0.56
UA値0.34…HEAT20G2クラス、日本の新築の1%未満程度、欧州では30年前の基準、中国、韓国では一般的な住宅
UA値0.23…HEAT20G3クラス、日本の新築の0.02%程度、欧州ではこれでも最低基準、中国では公営団地クラスの仕様、日本では300㎜断熱以上かプラスチック断熱材による付加断熱で可能(ただし欧州においてプラスチック断熱材は使用禁止)