景観に溶け込む建物とは?
2025/07/03
市中心部にある翠ケ丘公園(通称愛宕山)は早朝の散歩コースでもある。周辺は緑豊かで今では紫陽花の花が見頃を迎えている。しかしここ数年の間に松くい虫が猛威を振るい豊かな松林も所々に立ち枯れが目立ってきた。管理者でもある市当局は、周辺の住居に影響を及ぼすとのことで長年殺虫剤の空中散布を控え、何の対策も打たなかったため感染が急激に拡大しているようにも見受けられる。そのような中、輪をかけるように赤松の大木を含む貴重な樹木が伐採され、周辺の景観にはマッチしない建物が連続して建てられた。市は財政難の折、運営していた「老人憩いの家」を民間委託という名目で市内の土木業者に運営を肩代わりさせて経費の節減を図り利益の一部を還元させることにより公園の維持管理費用を捻出する制度を活用したと聞き及ぶ。大儀を得た業者は市当局と共に工事を優先させることを念頭に反対する市民の声を聞き入れることなく建物に干渉しない赤松や山桜の大木までも悉く伐採した。本来なら公園の中に造営する建物は周辺の景観を損なうことなく自然に溶け込むように作るべきものである。一例として壁に無垢の羽目板などを使用すれば経年変化によって自然と黒ずみ、また屋根にスレート系の素材を使用すれば時間と共に苔むして周りの樹木と同化する。いずれにしても設計や建築を行う際には様々な意見を聴き、プロポーザルなどの手法に基づいて建築するべきものであるが、残念ながらこれらの建物群にはそれらに配慮した経緯はなく利益のみを優先して建てられたものであることが見て取れる。ふくしま緑の百景に選ばれた市民の憩いの場でもある翠ケ丘公園はまさしく今、それらの事情によって自然が失われつつある。公園の維持管理のために公園の自然を破壊する?…ブラックユーモアにもならない笑えない話である。